年齢を重ねて脳の機能が衰えてくると、今起こったことや直前の会話を覚えておくのが難しくなって、何度も同じ話をするようになります。
この「同じことを何度も聞く」、「同じ話を何度もする」ですが、認知症の記憶障害では数分前に見聞きしたことや自分がした行動でも思い出せなくなってしまうので、そんな行動をするのです。
とくにアルツハイマー型認知症の初期症状の記憶障害では、数分前に見聞きしたことや自分がした行動でも思い出せなくなってしまっています。
「何度も同じ話を繰り返す」のは、認知症の前段階、軽度認知障害(MCI)。つまり、食事や入浴、排せつといった日常の中の基本的な動作を行なうには問題がないものの、認知機能の一部が低下している状態で、そのまま放っておくと認知症へ移行してしまいます。一刻も早い検査が必要になります。
同じ話を何度も言って、それさっきも聞いたよ!と、言われた時はありませんか。認知症になると、海馬の働きが悪くなっているため、新しいことを覚えることができないからです。
ですが、昔の記憶は覚えていることが多く、昔の話を何度も何度も繰り返します。認知症で同じ話を何度も何度も繰り返すのは、自分が話をしたこと自体を忘れてしまっているからです。ですので、「その話は、もう何回も聞いた」と言われても、本人は話をしていないと思っていますので、また同じ話を繰り返します。
認知症でなくても、話したことを単に忘れて、同じ話を繰り返してしまうことがありますが、その場合は、「前にも聞いたよ」と指摘されると、「あれ?そうだった?」と指摘を受け入れることができ、同じ話を繰り返すことを自分の意志で止めることができます。それは、単なる物忘れと言えるでしょう。
監修者・豊田早苗医師について
とよだクリニックの院長兼、認知症予防センターのセンター長で、講演会実績も多数あり。著書には、「日本全国ご当地自慢脳トレブック」、「認知症予防ハンドブック」など、認知症予防に関する数多くの書籍を執筆。「病気を診るのではなく、人を見る」を理念に掲げ、患者さん一人ひとりに手厚いサポートを行なっています。総合診療医学会・認知症予防学会に所属。
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「何度も同じ話を繰り返す」のは、危険な兆候かもしれません。食事や入浴、排せつといった日常の中の基本的な動作を行なうには問題がないものの、認知機能の一部が低下している状態で、そのまま放っておくと認知症へ移行しますから、一刻も早い検査が必要になります。