ここでは、物忘れ対策としての塗り絵について詳しくご紹介しています。人は塗り絵を完成させるまでの間に、脳の前頭葉、後頭葉、側頭葉をフルで稼働させている模様。脳の血流も良くなることから、塗り絵は物忘れや認知症の予防に良いとされています。科学的エビデンスも踏まえつつ、塗り絵と認知機能との関係について見てみましょう。
塗り絵とは、輪郭だけ描かれた模様の中に、自由に色を入れて楽しむ玩具の一種。もともと子供を対象とした知育玩具でしたが、2000年代に入ってから、高度な技術が求められる「大人の塗り絵」が流行。近年では、認知症や物忘れの予防法のひとつとして、老人ホームや高齢者のサークルなどでも広く人気です。
高齢者の認知症予防や物忘れ対策に良いとして話題の塗り絵ですが、それ以前から、作業療法を通じたリハビリの現場では、塗り絵はメジャーな療法のひとつでした。
科学的なエビデンスに基づいた療法というよりも、作業療法の世界において経験的に「脳に良い」とされて定着した療法のひとつとして、塗り絵は、主に認知症の患者に対して広く用いられています。
奈良県にある高齢者福祉施設「祥水園」では、利用者の日課として、塗り絵や計算問題をやっているそう。塗り絵では、自分が塗りたいと思う絵を自由に選んでもらい、それぞれ、ゆっくりと時間をかけて作品を仕上げるとのことです。
毎日、塗り絵や計算問題をしています(#^^#)
引用元:祥水園ブログ「塗り絵がすごいんです!~慈泉庵~」
沢山の塗り絵の用紙から、自分が今日塗りたいと思う物を選んで頂きますヽ(^o^)丿
細かい所も時間を掛けて丁寧に塗ります。
完成した作品はそれぞれがカラフルで、素晴らしい作品ばかりです。
塗り終えると作品の見せ合いをし、互いに「綺麗に塗ったなぁ」「いやいや、あかんよ~」と感想を言い合います。
面会に来られた家族様に作品を見せると、「こんなに綺麗に塗れるの?」「すごいね!」と大変喜ばれます。
毎日の日課とし、今後も取り組んで行きます(^-^)
http://shousuien.or.jp/blog/塗り絵がすごいんです~慈泉庵~/
杏林大学医学部精神神経科の古賀良彦教授は、塗り絵と人間の認知機能との関連について、次のように説明しています。
下絵を眺めているときには「後頭葉」や「側頭葉」が働き、使用する色や作業の要領をイメージしているときには「前頭葉」にある「前頭連合野」が稼働。実際に手を動かしているときには「前頭葉」が働くなど、塗り絵というひとつの行為において、脳のあらゆる部分が一斉に稼働します。
脳が活発に働いているときほど、脳の血流が増加し、脳にヘモグロビンが多く集まります。この性質を利用し、塗り絵をしている被験者の脳のヘモグロビン量を測定。すると、塗り絵を始めて15秒後には被験者の脳に変化が現れ始め、30秒後には被験者の脳にヘモグロビンが多く集まってきました。
都内の病院に入院中の中程度~重度の認知症患者6名に対し、1ヶ月間、週4回程度のペースで塗り絵をやってもらいました。その後、「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)」で認知状態をチェックしてみたところ、実験前の平均点が12点だったのに対し、実験後の平均点が14点に向上。科学的な有意差とは言えないものの、実験に不参加だった人たちの平均点が下がったことに照らし、塗り絵が脳に何らかの作用をもたらしたことが示唆されました。
塗り絵を始め、いかなる認知症や物忘れ対策であれ、継続しなければ意味はありません。対策をやめたときから認知症や物忘れが進行していく、と考えても良いでしょう。
その意味において、精神的・物理的な抵抗なくすぐに始められる対策は、とても有効。特段に手間のかかる準備がいらない塗り絵だからこそ、ぜひ物忘れ対策として習慣にしていきたいものです。